犬と猫の血液型について

犬の血液型について

 犬の血液型は?

 人の血液型にABO式やRh式があるように、犬の血液型にもたくさんの分類方法があります。その中で、国際的に認められているのはDEAによる分類で、13種類があります。

 犬の血液型を調べることはできますか?

 現在、DEA1.1型であるかどうかを調べるキットが市販されていますので 動物病院で調べてもらうことができます

 血液型がわかると、どんなメリットがありますか?

 安全な輸血を受けるのに役立ちます。
 輸血用の血液を提供することができます。
 安全な出産・子育てに役立ちます。
 (新生児溶血:父犬がDEA1.1(+)、母犬がDEA1.1(-)の場合生まれた子犬が母犬の初乳を飲むことで、溶血反応を起こし数日で死に至ることがあります。)

 新生児溶血を予防することはできますか?

 事前に父犬・母犬の血液型をしらべ、DEA1.1(+)オス×DEA1.1(-)メスの組み合わせの交配を避けることで予防できます。
 また、上記の組み合わせで出産した場合も、生まれてすぐに子犬を母犬から離し、人工乳を与えれば予防できます。

猫の血液型について

 猫の血液型は?

A A型、B型、AB型の3種類が知られています。

 猫の血液型を調べることはできますか?

 現在、血液型を調べるキットが市販されていますので、動物病院で調べてもらうことができます

 品種によって違いは?

 純粋種ではアメリカン・ショートヘア、シャム、トンキニーズ、バーミーズがA型のみだと云われています。また、スコティッシュ・フォールド、スフィンクスソマリ、バーマンにはA型、B型の他にAB型も見られるそうです。その他の品種はA型とB型があると報告されています。

 日本猫や国内の雑種猫は?

 ほとんどがA型だといわれていますが、AB型が居たという報告もあります。

 血液型がわかると、どんなメリットがありますか?

 安全な輸血を受ける事ができます。
 (とくに、B型の猫が持っている抗A抗体は非常に強力で間違った輸血を受けると死に至ることがあります。)
 輸血用の血液を提供することができます。
 安全な出産・子育てに役立ちます。
 (新生児溶血:母猫がB型で子猫がA型の場合、母猫の初乳を飲むことで溶血反応を起こし数日で死に至ることがあります。)

 新生児溶血を予防することはできますか?

 事前に父猫・母猫の血液型をしらべ、A型オス×B型メスの組み合わせの交配を避けることで予防できます。また、上記の組み合わせで出産した場合も生まれてすぐに子猫を母猫から離し、人工乳を与えれば予防できます。


自己血輸血について

自己血輸血って何?

一般的に行われている他の個体からの輸血を『同種血輸血』といわれています。それに対し、同じ個体の血液を輸血するのを『自己血輸血』といいます。

自己血輸血のメリットは?

大がかりな器具や準備が必要な反面、『同種血輸血』に見られる発熱、蕁麻疹移植片対宿主病、エイズや肝炎などの血液由来性感染症を回避することができます。また、『同種血輸血』により免疫力の低下を起こし、将来的にガンの発生率が上がるのを防ぐこともできます。

移植片対宿主病とは: 輸血された血液中のリンパ球が輸血相手の細胞に攻撃をしかけ100%死亡してしまう病気

どんな自己血輸血があるの?

自己血輸血には下記の3つの方法があります。

  • 手術前に自分の血液を抜いて貯めておく『貯血式自己血輸血
  • 手術直前に血液を採取し、その量に見合った量の輸液(リンゲル等)をして手術をしながら採取した血液を戻していく『希釈式自己血輸血
  • 手術中や手術後に出た血液を回収して、再び血管内に戻す『回収式自己血輸血

自己血輸血に関して思うこと

院長

 現在、人の医療では『同種血輸血』の問題点は認識されていますが、大がかりな設備やそれを扱う人員、準備などが必要なため、『自己血輸血』がなかなか普及していません。 

 実際に輸血を受ける際に医師から「あなたは輸血を受けることによって、将来的にガンの発生率が上がりますが、承諾して頂けますか?」と説明を受けることは少ないようです。
 それは、すでに『同種血輸血』が治療の1つとして当たり前のように行われているからです。

それでは、不必要な『同種血輸血』を減らすためには、どうすれば良いのでしょうか?

私は『自己血輸血』をもっと簡単にできるようにして普及させれば『同種血輸血』を受けるケースは少なくなると考えています。

ただし、『自己血輸血』は『同種血輸血』を否定するものではなくて輸血方法の選択肢の1つと考えて下さい。

昨今、マスコミで報道されている、手術ミスから起こった不幸な医療事故も『自己血輸血』の進歩によって多くは防げると思いますし、救急医療の現場でも出血多量で亡くなる命を減らす事ができると確信しています。

しかし、動物愛護法の改正により動物実験を簡単に行うことができなくなった今我々獣医師が新しい医療技術の開発に積極的に取り組んで行くべき''だと思います。

もちろん、飼い主さまの大切な家族を実験に使って危険にさらしたり安全確実な治療法があるのにもかかわらず、他の治療法を試すことは絶対にあってはならないことです。
あくまでも、従来の治療法では難しい場合の選択肢として新しい治療法を試みるべきだと思っています。

私は過去に獣医学会で『自己血輸血』に関する発表を行って、表彰を受けるなどそれなりの評価を受けましたが、依然『自己血輸血』を積極的に取り入れてくれる動物病院が無いのが現実です。

あと10年足らずの私の残された(臨床)獣医人生は、今まで信頼して支えてくれた飼い主さまたちや、世の中への恩返しのために使いたいと考えています。

これからも、学会への出席などでご迷惑をかけることがあるかと思いますがよろしくお願いします。

南動物病院 院長 南 博文

(参考文献)
Hohenhaus,A.E.(2000):Blood banking and transfusion medicine.
In Ettinger,S,J.,Feldman,E.C.,eds:Textbook of Veterinary Internal Medicine 5th ed.,348-356,WB Saunders,Philadelphia.
高島一昭(2004):臨床における輸血の実際、Medicine(Journal of Small Animal Medicine)Vol6,No.5